使用する楽器について
ピアノ
1988年当時これを始めたころ、実際に使えるシステムはYAMAHA社の"ピアノプレーヤ"だけだった。ベーゼンドルファー社の自動演奏ピアノが存在したが、MIDI規格をサポートしていないため、私の用途には合わなかったのだ。選択の余地はなく、ショパン・ゴドフスキーの録音にはピアノプレーヤ付きのYAMAHA C7を使用した。その後このピアノを使用することができなくなり、しばらくはデータ制作だけの時間が流れた。1998年のアルカン短調エチュードのときにはピアノプレーやとMIDI音源と両方を用意したが、結局後者でやらざるを得なくなった。2000年に出したバッハ・ゴドフスキーの2枚と、2001年のアルカンCDは、YAMAHA C3プレーやで録音した。楽器が小さいため音に余裕がなく、思い描いた通りにはならなかったが、それでも一定の成果を出したと思う。そんなノウハウを詰め込み、アムラン氏にもアドヴァイスをもらいながら進めたソラブジ作品だったが、許諾が得られずオクラ入り。
自動演奏ピアノの発音のさせ方自体は昔から変わっておらず、鍵盤奥を下(裏)側がら突き上げることにより、(鍵盤を押し下げたのとほぼ同じように)アクション各部分が動き、ハンマーが弦を打つということだ。駆動方法としては、紙のロールを記録媒体としていた時代は、小袋(「く」の字の両面にレバークロスが張ってある)の中の空気を抜き取る瞬間に「パチン」とたたまれる?勢いを駆動力としていた。現在はソレノイドのドライヴ(電磁石)で突き上げて動かしている。
マランツ製のピアノコーダー、というのがあった。記録媒体はカセットテープで、アナログの機械としてはとても良く出来ていたと思う。ドライヴの取り付け位置は棚板の下だったため、棚板に穴を開けて鍵盤(裏)をねらう調整が必要だった。ピアノの鍵盤は88鍵を3〜4セクションに分けて(鍵割れ、と言う)いるが、マランツの方式なら、鍵割れのいかんに関わらず、取り付けが可能だった。YAMAHAピアノプレーヤの駆動ユニットはアップライトの場合、鍵盤と棚板のわずかの隙間に入る薄いユニットで、まさに技術力の勝利だが、鍵割れごとに違ったサイズのユニットが必要になる。グランドピアノ用のユニットは鍵割れに対応しているが、さすがにアクション本体に押し込むスペースはない為、マランツと同様に棚板下に取り付けられている(が非常に薄型)。ちなみに既に販売されたグランドピアノへの後付けには、残念ながらメーカーが対応していない。
今までのどれもが「ピアノを選ぶ自由がない」のだ。本体に取り付けらた駆動ユニットと演奏をコントロールするシーケンス部。それらが一体の「商品」として販売されているので、たとえば○○○ホールにあるピアノで録音したい、というのは無理なハナシだ。しかしロールピアノの時代からユニット内臓タイプではないシステムがあった。それは「
フォルゼッツァ」と呼ばれていた。調律を習った師匠はボルセッサ呼んでいたし、実物も見たことがある。若いころに師匠のカバン持ちで、亡くなったSONYの盛田氏の自宅にお供したときに、スタインウェイのグランドピアノに内臓されたロールピアノとは別に、鍵盤上に覆いかぶさり、鍵盤に接する面に88本の「指」が出ている
フォルゼッツァがあった。そのどちらも我が師匠が修理調整をしたシロモノで、当時そのような技術者は他にはいなかっただろう、と尊敬していた次第である。
フォルゼッツァはドイツ語で「前に座る者」という意味だと、後に説明してくれたのはピアノ仲間の藤巻氏。
2004年の暮れも押し迫って、突然思いついた。
フォルゼッツァを作ろう、と。それがあれば、出かけていってホールのピアノを使用することが出来る。録音はもちろんのこと、その気になれば、以前に計画して結局は実現しなかったコンサートも、だいぶ楽に実現できるかもしれない。
そういえば、毎年「申請書をだしてください」という案内がくる。その気が失せたので無視してきたけれど、ひょっとすると申し込むかもしれない。ちょっと待て、これはハナシが飛躍している。まだ「
フォルゼッツァを作ろう」と思い付いただけだ。